和楽器市場














弊社で販売しております琴(中級品琴、くり甲琴)は経済産業大臣指定伝統的工芸品でございます。

伝統的工芸品とは「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づいて、経済産業大臣が指定するものです。
伝統的工芸品として指定されるには、以下の5つの要件を満たす必要があります。
1.主として日常生活のように供されるものであること
2.製造過程の主要部分が手工業的であること
3.伝統的技術・技法によって製造されるものであること
4.伝統的に使用されてきた原材料であること
5.一定の地域で産地を形成していること
























当店の職人です。琴の絃を左手で締めておりますが「左利き」ではございません。ではなぜ、利き手ではない左手で締めているのか?
昔はお琴の絃には絹糸が使用されておりました。(現在はテトロン糸が主流です)絹糸は大変音は良いのですが、切れやすいという側面があり、演奏会の時などは舞台上で演奏中に絃が切れることがあったそうです。
その為、箏の糸締め職人は舞台上で絃を締めていたそうですが、箏をセッティングした状態で絃を「右手」で締めると客席に背中を向けてしまう為、東京の職人さんたちは利き手ではない「左手」で糸締めをするようになったそうです。左手で締めると客席には背中を向ける必要がありません。
先代の技術を引き継いできた東京の職人さんたちは、今でも「左手」で締める人が多いです。(現在は切れにくいテトロン糸が主流の為、舞台上で締めることは殆どありませんが...)
その為、25年前に東京に修行に出ていた当店の職人も、東京の技術を引き継ぎ「左手」で締めております。

【糸締めについて】
13絃琴は基本的には一般的な「高調子」の締め方で糸を締めます。
高調子と低調子の両方が可能な「高低調子」での糸締めはお勧めしておりません。
なぜかと申しますと、低調子が取れるように全体的に通常よりも緩めに締める必要があるからです。
その場合、低調子で演奏する分には問題はありませんが、高調子で演奏する場合に糸の張りが全体的に通常よりも緩い為、音色を最大限に発揮できないデメリットが生じてしまいます。
低調子の曲をメインに演奏される場合は、高低調子の糸締めをお勧めいたしますが、それ以外の方は一般的な高調子の締め方がお勧めです。




琴は柏葉、四分六板でランク付けされております。本体はすべて桐材ですが、柏葉や四分六板の材質にはランク別に
花梨、紫檀、紅木材を使用し、縁取りがあるものや最高級琴のくり甲のように玉縁包みという方法を用いるなど様々です。





コトを表す漢字に「箏」と「琴」がありますが、箏は現在普通にコトと呼んでいる十三絃の楽器をさし、琴は柱(じ)を用いない七絃の楽器で「きん」と読みます。
現在では常用漢字の中に琴の文字しか含まれていないため、一般的には箏よりも琴の方が通りが良いです。
しかし、筝曲の道に関係する人達は箏の字を「こと」と読んだり、筝曲(そうきょく)というふうに使っています。





中国より雅楽の楽器の一つとして伝来しましたが、日本の箏曲の発祥は九州・久留米の僧賢順が雅楽と琴曲の影響を受けて筑紫流といわれる箏(琴)の音楽を室町時代末期に大成したことに始まります。
筑紫流は、その後八橋流を経て生田流、山田流を生み出しました。
十八世紀に江戸の山田検校が、それまで三味線の伴奏役であった琴を主楽器として作曲したのにあわせて、琴師重元房吉が楽器の改良をおこない、琴の長さを六尺とし、厚みもそれまでのものよりも厚くし、縦方向のソリを強くして音量の増加を図りました。これが山田琴の原型で、現在では、山田流、生田流を問わず山田琴が使用されています。




 
     
             
(1)樹齢40〜50年位直径40p以上の桐を使用します。
  (2)丸太の切り口と側面を少し削り取ったところから木の中の木目の入り方を想像して木の伐り方を決めます。

  (3)2〜3年陰干しをして曲がりを充分に出し切り又、甲を充分に乾かします。   (4)乾燥された荒甲を鉋で削り込んで正規の山を作ります。
     
     
(5)裏板を削りは丁斧(ちょうな)でくり抜いていきます。   (6)くり甲作りの場合,音を少しでも良くするため、裏板に鑿(ノミ)で彫り込みを入れます
  (7)裏板のつけ方にはべたづけとくり甲づくりの二通りの方法があります。   (8)真っ赤に焼いた鏝(こて)で木の表面を焼き、その後ウズクリで表面をこすり、きれいな木目を出します。

             
             
(9)口前は唐木を使ったり彫刻金具を掘り込んだりします。   (10)琴のランクを決める柏葉部分はベタ作りと透し作りがあります。   (11)座金を打つ時は四分六板を割らない様、細心の注意が要求されます。    







◆裏板付け

裏板の付け方には二通りの方法があります。
1、べたづけは、普通甲の裏側にべったりと付けてしまう方法で、琴の磯(側面)から見ると裏板が付けてあるのがよくわかります。(お稽古用琴や上角琴(演奏会用)はべたづけの作りになります)

2、留め甲づくりは、甲の側面(磯)を角度をつけて削り込み、裏板の両端中側も同じ角度をつけ、A図のようにはめ合わせます。磯から見ても裏板側からみても板のはり合わせが全然わかりません。これを留め甲づくりと言います。
さらにくり甲づくりは、後の端も表甲をくり抜いてつけてあり、どこから見ても継ぎ目を見ることができず、琴の中で最も手の込んだ作りになります。継ぎ目がないという外観上の作りだけでなく、材料も含めて最高級品となっております。







ベタ作り(花梨巻)

琴の四分六板、柏葉、竜角、雲角のいずれにもプラスチックや
骨などで縁取りしないのを、「ベタ作り」といいます。琴の中では
一番値段が安く、お稽古用として使われます。


口角(花梨巻・紫檀巻)

口角というのは、竜角と雲角に一本の角を入れて飾りをしたもの
を言います。一般的にお稽古用として使われています。また、
上等の原木を使ったことでも質素に見せるために紅木などで
ベタ作りや口角作りにすることもあります。
  


半上角作り(紫檀巻)

四分六板に、プラスチックや角などで縁どりするのを、
半上角といいます。柏葉には縁どりをしません。少し上等に
見せるために、口前に口前金具を入れる場合もあり、
半上角金口といっています。半上角作りの琴は、中級以下
の品物なので、一般的には四分六板や竜角、雲角の材料と
しては紫檀を用います。
 


上角作り(紅木巻)

四分六板のほかに、柏葉も縁どりしたものを上角と言います。
縁どりに使う材料はプラスチック、舎利などです。このクラス
から四分六板、竜角などの材料は紅木を使います。
また、口前に金口を入れた上角金口もございます。


くり甲作り(玉縁紅木巻)

四分六板や柏葉の縁どりに、玉縁包みという方法を用います。
琴の中「甲の裏側」に音響を良くするために綾杉紋様を彫ります。
(二重に彫られた子持綾杉紋様もあります)また、くり甲といって
甲と裏板のつなぎ目がない作りになっており、琴の中では
最高のクラスになります。琴もこのクラスになると芸術品、
芸術品的な様相を帯びてきます。


十七弦

十七弦琴は、低音楽器です。琴(13本)と違って17本の絃を
使います。洋楽器で言えば、チェロなどの音域を担当しますので、
絃も低音用に太いものを使います。
十七弦にも、ベタ作りやくり甲作りなどがあり、四分六や柏葉
には紫檀や紅木などを用います。








弊社は創業90年というこの業界の中でも長い歴史を持っておりますが、現在はこの和楽器業界は昔のような活気はございません。
また、和楽器は2004年頃から学校の音楽の必須科目となり、以前のような活気が戻ってくるのではと業界内では楽観視しておりましたが未だに限定的です。

どうすれば三味線や琴を始めてくれる人が増えるのか、どうすれば昔の活気を取り戻せるのか・・・
ある業者さんは「無料体験レッスンをすればいいのでは」や「学校などでの講習などを増やせばいいのでは」等さまざまな意見がありました。
いろいろな意見がある中で弊社の結論は「楽器が高すぎる」ということに至りました。
やはり三味線や琴を習いたくても楽器の購入がネックとなり断念してしまう方も多いのではないでしょうか?しかし、楽器の価格を下げることは容易なことではない・・・

弊社が価格を大幅に値下げをしたのはインターネット販売を開始してからですが、それまでには次のような経緯がございました。

通常、「客数が多い(売り足が早い)と利幅は低く(低価格)、売り足が遅いと、利益率は高く(高価格)」という原則があります。

弊社では以前は地元のみでの販売を行っておりましたので他店と同様、売り足が遅い分、利益率を高く設定し高価格にて三味線や琴を販売しておりました。
もちろん三味線や琴は伝統工芸品でもありますので、その価値は高いです。
しかし、「楽器が全国的に高すぎる」、これでは絶対に和楽器業界は廃れていくと感じておりました。

弊社がインターネットでの販売を始めたのは今から約10年ほど前になりますが、販売地域が全国に広がった為に多くのお客様からご利用いただくようになり、今までよりも利幅を大幅に低く設定することが出来るようになりました。お客様には本当に感謝の一言です。
今でも地元のみで営業している和楽器店は売り足が遅い分、以前と変わらず利益率を非常に高くしている為に高価格なのです。

ただ、利幅を大幅に低く設定出来るようになったとはいえ、ここまで価格を下げる必要はあるのかと考えた時期もありましたが、少しでも多くの方に和楽器に触れていただき、その良さを分かっていただきたい、そして次の世代にその良さを伝えていただきたい、そうすれば以前のような活気が戻ってくるかもしれない、そう考え思い切って大幅な値下げに踏み切りました。

「楽器が高くて始められない」、「教室の月謝が高くて続かない」という時代ではなく、以前よりも楽器が安く入手でき、入門書やDVDなどでいつでも簡単に独学でも始められる時代になったように思います。これもまた弊社をご利用いただいているお客様のお蔭なのです。

今では楽器だけでなく付属品なども低価格販売を行っていることで同業者からの批判も非常に多いのですが、弊社では全国の多くのお客様に少しでも喜んでいただけるよう日々努力し、和楽器業界が以前のような活気を取り戻し、そして多くの方にその良さを分かっていただけるよう今後も低価格販売を続けて参ります。

そして邦楽界が少しでも以前のような活気を取り戻してくれれば幸いです。